ニューガクシキで 一番 嫌だったことは ? 話(38)
新学期が近づくと、浮き浮きするものです。
ところがKセンセーには、憂鬱になることがありました。
Kセンセーに、語ってもらいます。
初めてのクラス担任。
ニューガクシキ。
緊張しながら、自分のクラスのセートの名前を一人一人呼び始めた。
すると会場のあちこちから、クスクス笑う声が起きた。
地方出身者特有のアクセントがあったからだ。
ふだんは、それほどでもない。
ジョシセートの、例えば「なおみ」「まゆみ」などの発音が、
どうも関東の人と違うらしい。
その後も、ニューガクシキ・シギョーシキ・ソツギョーシキは、
いつも緊張した。
緊張すればするほど、アクセントがひどくなった。
だから4月には、新しい担任クラスや、
授業するクラスすべてで、自己紹介のときに強調した。
自分は、○○県出身だ。
関東の人とは違うアクセントがある。
「雨」と「飴」の区別ができない。
「レインのアメ」「キャンディのアメ」。
「橋」と「端」と「箸」の区別もできない。
「ブリッジのハシ」「端っこのハシ」「食べるときのおハシ」。
ジュギョーでは、変に聞こえることもあると思うが、了解願いたい。
一種、言語障害だ。
何度か「呼名」の練習をしたが、ダメだった。
ソツギョーシキの時は、まだよかった。
3年間でアクセントに慣れたセートたちは、心がやさしい。
自然に受け止めてくれて、笑声はおきなかった。
全国から集まった研究会などで、関西の人は堂々と話す。
うらやましい。
アクセントは、死ぬまで、いや死んでも治せないか。
治らなかった理由は簡単だ。
大学時代、「出身県の学生寮」で過ごしたからだ。
大学に行っている間は、共通語らしきものを話す。
しかし、寮に帰ると方言で話す。
方言から共通語への「断絶」「転換」がなかったのだ。
学生寮は安かった。
朝夕食つきで6千円だった。
安アパートの家賃で、飯まで食えたのだ。
仕送り1万円、奨学金1万円、
それにバイト代1万円を合わせて生活していた時代のはなしである。
ところで、皆さんはアクセントはありますか ?
共通語と方言の「バイリンガル」でうまくやっていらっしゃいますか ?
* 当初書いた「訛り」を「アクセント」に変更してみました。