不思議だ こんな静寂があるなんて 話(53)
『朝の読書が奇跡を生んだ』の中で、
Kセンセーがひきつけられた一節を紹介します。
皆さんのコーコー時代を思い出して、読んでみてください。
朝、8時35分のチャイムが鳴ると、
クラス担任の教師たちはいっせいに職員室を出て、
それぞれの教室に向かう。
出席簿を手にしている姿は他の学校と変わりはないが、
一つだけこの学校の教師たちが違っているのは、
それぞれの手に、
自分の好きな本を一冊抱えていることである。
生徒たちといっしょに、
朝の「読書の時間」に読む本である。
教師だけではない。
生徒たちもそれぞれ自分の好きな本を一冊、
鞄に入れて登校する。
船橋学園の朝が、
10分間の全校一斉読書から始まるからである。 …
… 読書の時間を告げるチャイムが鳴った。
もう校庭にも、廊下にも、高校生たちの姿はない。
「どうぞご自由に!」と言われて、
恐る恐る3年4組の後方のドアをあける。
一瞬とまどう。
そこはまるで別世界。
水を売ったような静けさの中、
40数人の高校生と先生がシンとして、本に集中している。
20年あまり取材を続けてきて、
高校の「教室」でこんな静寂に出会うのは初めてだ。
コトリとも音がしないのが、ちょっと不気味なほど。
…
そっと教室を出て、隣のクラスのドアをあける。
一瞬、数人が後ろを振り向くが、あとは再びもとの静寂。
それにしても不思議だ。
こんな静寂が高校の教室にあるなんていうこと自体、とても不思議だ。
教室の後ろに立っていると、
女子高校生たちのサラサラした長い髪が目にまばゆい。
本に熱中している高校生の姿は何とも美しい光景である …
さんざん苦しんでいる「大変なコーコー」の現場。
それにくらべて、夢のような光景だ。
「毎朝10分、セートが自分で選んだ本を読む時間」を設けただけで、
こんなにすごいことになるのか。
まさに奇跡だ。
ところで皆さんのコーコー時代の、朝の風景はどうでしたか。
遅刻もなく、静かな朝だったでしょうか。
Kセンセーの出た田舎の出身校は「異常な進学校」でした。
遅刻も全くといっていいほどなく、静か。
チャイムが鳴ってから、廊下を走って駆け込むのは、彼ぐらい。
しかし、彼が赴任した「大変なコーコー」は、
それとはまったく違う世界だったのです。