崖の上の家の …
引き籠り、時々外。
毎日1時間半、約6キロのウォーキング。
このときばかりは、コロナの不快なニュースから解放される。
二百数十段の階段を一気に登る。
頂上をすぎて下り始めたところの、崖の上の家。
花が咲いていたので、見上げる。
その家の住人が、花や木の手入れをしていた。
目が合った。
「こんにちは」と声をかけられた。
相手が女性だとわかって、びっくり。
こちらからも、「こんにちは」
「その花なんですか」
「これですか。コデマリです」
「教えていただき、ありがとうございます」
お互いに笑顔で、別れた。
下りの途中に、一面のタンポポの花。
綿帽子がついている。
昨日の強風で、飛んでいってしまった。
蛙の田んぼの前の家。
青年が、剣道の素振りをしていた。
背筋がすっきりのびて、竹刀を振る姿が美しい。
思わず、声をかけた。
「すみません。何段をお持ちですか」
「3段です」
「やはり。先日、お見かけした時、見事だなと思ったものですから」
「ありがとうございます」
ターンして、別な坂を上り始める。
上りきって歩いていくと、下の方に竹の林。
自分の背丈の2倍、3倍はあろうかと思われるタケノコ。
何本も生えている。
林の中を過ぎて、集合団地へ。
頭上を横に張られた、ロープ。
幾匹もの鯉のぼりが泳いでいた。
団地用サイズなので、かわいい。
巣立った子どもたちの鯉のぼりを、団地自治会で集めて飾ったにちがいない。
戸建て住宅の中を歩いていると、ネコに眼(がん)をつけられた。
先日の小学生の男の子の時と同じく、
自分とネコは、お互いに視線をはずさない。
眼の飛ばし合いである。
男児は声を発したが、今度は、こちらから「ミャーオ」と鳴き真似をした。
だが、無視された。
加齢のせいか、特技の「ネコの鳴き真似」までふがいなくなっている。
ネコからの挨拶の返しがなかったのは、悔しかった。
崖の上の家の女性、素振りの青年。
長い引き籠りの最中なので、久しぶりの会話は気持ちがよかった。