人の「恋」に ケチをつけると …
子どものころ世間では
「キョジン・タイーホー・卵焼き」という言葉がはやった。
運動嫌いの自分には、キョジンやタイホーのことなど無縁な話である。
子どものころから、強いやつは嫌いだったような気がする。
しかし、卵焼きだけは、好きだった。
就職して職場の同僚に、とくに目立つ野球ファンが2人いた。
タイガと、ジャイアンの熱烈なファンである。
前夜に試合があったあとの朝など、かならず奇妙なムードが流れていた。
片方は笑顔、
他方は、こころなしか涙目 … 。
たしかジャイアンの上部が、ルールの隙をついた汚い引き抜きをやり、
タイガにピッチャーを放出した事件があったころのことである。
自分は野球のことなど全く好きでないのに、
放出されたピッチャーが勝つと嬉しかった。
ジャイアンのファンが聞き耳を立てていたのに、
「自分はアンチジャイアン。
ジャイアンが負ければ、嬉しい」みたいなことを、うっかり言ってしまった。
すると、それを聞いたジャイアンのファンが、
「そんなの野球ファンじゃない」と、まっ赤な顔をして抗議してきた。
かねて気の弱い男なのに、である。
そのとき、ファンというものは恐ろしいと思った。
人の「恋するもの」にケチをつけてはならないと、このときも痛感。
そういえば、ジャイアンファンの従弟。
たしか大阪あたりの大学に通っていた。
タイガ・ジャイアン戦の帰り。
電車の中では、タイガの帽子をかぶっていたと話してくれた。
ジャイアンの勝利で内心うれしかったが、
顔に出さないように、その気持ちをひた隠しにしていた、と。
まあ、とにかく人の「恋するもの」には触れない方がいい。
そういえば、最も信頼できる後輩同僚の一人も、
熱烈なジャイアンファンだった。
シャカイ・セージネタも、あぶないと思いながら綴っている。
トラさんやマスクマンのことを、大好きな人もいるわけだから。
ちなみにジジイは、ジャイアンの王さんのことは好きである。