「生活保護」に 関わったことがありますか ?
突然、職場にケーサツから電話が来た。
90歳近いギオバ。
彼女の家のシャッターが、1週間、閉まったままだと。
鍵屋さんを呼び、ケーサツカンと一緒に中へ。
彼女は、寝たままだった。
この家を、一度も訪れたことがない。
中に入ってみて、極貧の状態であることがわかった。
30年近くの間に、冠婚葬祭で3回ほどしか会ったことのないギオバ。
ギオバは、自分もアイカタも血縁ではない。
救急車で病院へ。
低栄養、脱水症状、認知症で入院。
それから、いろいろ走り回った。
ギオバからの最初の言葉は、「あなたは、誰 ?」。
次の言葉は、「○○(血縁の甥)にだけは、絶対に連絡しないでくれ」だった。
いろいろやらなければならないことが、押し寄せてきた。
まず、入院費をどうするか。
預金通帳と、印鑑のありかを教えてもらう。
100万円ちょっとの残高。
年金の額が、極小である。
残高は、入院費であっという間に消えるだろう。
役所の福祉課と相談する。
自分には、「扶養義務がない」ことを確認できた。
扶養義務や金銭的負担がないと知って、心が軽くなった。
人道上の立場からだったら、いくらでも動き回ることができる。
生活保護の手続きに入る。
その途中で、他行に預金残高があることがわかった。
使い切るまでは、生活保護の心配はない。
手続きを中止。
以前にも書いたが、思いだしただけでも、
次のようなところに出かけたり、連絡をとったりした。
病院・老健施設・役所・地域包括支援センター・銀行(複数)・郵便局・法務局
税務署・交番・電力会社・取引業者・NTT・郵便局・家庭裁判所
ガス会社・新聞販売店・成年後見相談センター・スーパー(衣料品)
血縁者・隣家・特養ホーム …
そこで初めて、血縁の甥にも連絡しなければならなくなった。
「○○にだけは、絶対に連絡しないでくれ」と最初に言われた人物である。
相続権のある甥姪すべての了解を得て、
半年かかって、成年後見人までたどり着いた。
ところで、「生活保護」をためらう最大の理由が、「扶養照会」なのだそうだ。
わかる。
「絶対に連絡しないでくれ」という強い言葉。
もし自分自身が生活保護申請をしなければならなくなったとしても、
親・兄弟・親戚には連絡してほしくない。
彼らに知られたくないし、負担をかけたくもないからである。
厚労大臣は、「扶養照会の義務はない」と国会で明言した。
画期的なことである。
ただし、生活保護の申請を受け付ける役所の現場が、
ちゃんと対応してくれるだろうか。
現場では、今まで通り「扶養照会」をつづけるのだろう。
人生、どんなことが起きるかわからない。
親兄弟親戚に知られず、生活保護の申請ができるようになってほしいと、
心の底から思う。
ちなみにギオバは認知症のために、
自分の預金や資産の額を知ることなく、亡くなった。
百万円の一つ上の桁だったという。