人生百年 有為自然

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有為自然 656 エスカレーターに乗ろうとしたら おばあちゃんが …

 エスカレーターに乗ろうとしたら おばあちゃんが …

 

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病院帰りに、スーパーに行った。

エスカレーターの前に、年寄り夫婦。

おじいちゃんが先に乗って、行ってしまった。

 

おばあちゃんが、必死にエスカレーターに足を乗せようとしている。

身体が小刻みにふるえている。

なかなか一歩が出ない。

後をふりかえると、みんなチラッと見て素通りしていく。

エスカレーターに乗ったとしても、

途中で、あるいは降りるときに転ぶ危険性がある。

 

思い切って、おばあちゃんに声をかけた。

「お手伝いしましょうか ?」

返事がない。

時間が過ぎるので、「一緒にいきましょうね」と、

彼女の右腕のわきをかかえてあげた。

エスカレーターに乗った。

降りる所が近づく。

危ないので、また支える。

 

「もっと上ですか」

さらに上へ。

乗るときと降りるときに、右腕のわきを支えてあげた。

 

3階で、カートを持つおじいちゃんが待っていた。

おじいちゃんが、無言で頭を下げてお礼をした。

おばあちゃんは大きな声で何か言ったのだが、何を言ったのか聞き取れない。

耳が遠いのと、認知症が少し入っているのかもしれない。

 

エスカレーターは、怖い。

生まれて初めて、エスカレーターに乗った時のことを思い出した。

 

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そういえば、カーディガンを裏返しに着た若いジョセーに、

注意してあげたときのことまで思い出してしまった。

エスカレーターを上り終わったところで、

そのことをジョセーに教えてあげたのである。

するとジョセーは振り向きざま、恐ろしい形相で私をキーッと睨みつけた。

 

おせっかいジジイの親切心も、じゅうぶん気をつけなければならない。