エスカレーターに乗ろうとしたら おばあちゃんが …
病院帰りに、スーパーに行った。
エスカレーターの前に、年寄り夫婦。
おじいちゃんが先に乗って、行ってしまった。
おばあちゃんが、必死にエスカレーターに足を乗せようとしている。
身体が小刻みにふるえている。
なかなか一歩が出ない。
後をふりかえると、みんなチラッと見て素通りしていく。
エスカレーターに乗ったとしても、
途中で、あるいは降りるときに転ぶ危険性がある。
思い切って、おばあちゃんに声をかけた。
「お手伝いしましょうか ?」
返事がない。
時間が過ぎるので、「一緒にいきましょうね」と、
彼女の右腕のわきをかかえてあげた。
エスカレーターに乗った。
降りる所が近づく。
危ないので、また支える。
「もっと上ですか」
さらに上へ。
乗るときと降りるときに、右腕のわきを支えてあげた。
3階で、カートを持つおじいちゃんが待っていた。
おじいちゃんが、無言で頭を下げてお礼をした。
おばあちゃんは大きな声で何か言ったのだが、何を言ったのか聞き取れない。
耳が遠いのと、認知症が少し入っているのかもしれない。
エスカレーターは、怖い。
生まれて初めて、エスカレーターに乗った時のことを思い出した。
そういえば、カーディガンを裏返しに着た若いジョセーに、
注意してあげたときのことまで思い出してしまった。
エスカレーターを上り終わったところで、
そのことをジョセーに教えてあげたのである。
するとジョセーは振り向きざま、恐ろしい形相で私をキーッと睨みつけた。
おせっかいジジイの親切心も、じゅうぶん気をつけなければならない。