死んだオヤジの 残したものは …
「○○○○(私のこと)が帰ってくると、
父さんの機嫌が悪くなっていた」
父が亡くなったあと、
認知症になる前の母が話したことです。
学生時代、帰省するたびに父と口論。
「お前の考えは、とんでもない。
いったい誰(どの教師)の影響を受けた!!」
社会的なことを口にしたことがなく、
関心ももたなかった父。
そんな父でしたが、父の話したことの中で、
「強烈に記憶に残っていること」があります。
父は終戦の前年、学校(今の大学)を繰り上げ卒業。
国内で、8カ月の軍隊生活。
そして終戦。
大学卒だということで、徹底的に理不尽にしごかれた。
きびしい訓練やしごきによって、病死した戦友。
戦後になって、映画館の前で土下座して父に謝った上官。
(戦時中、軍隊内でひどいしごきをやっていた)
兵たちの間で話題になっていた、城下町の美しい娘さん。
空襲の焼け跡で、防空壕を片づけていると、
彼女の焼けただれた死体が出てきた。
(父の)弟が少年兵に志願することに同意した。
そのことへの後悔。
弟は、沖縄戦で戦死。
父は学業成績もよく、スポーツ万能の人間。
しかしその父から、戦争の勇ましい話を聞いたことは一度もありません。
原爆の写真集を買ってきてくれました。
父は反戦運動や、
アンポ反対の運動をするような人間ではありませんでした。
しかし、その父から
「戦争は絶対によくない」ということを叩き込まれた気がします。
自分は「戦争を知らない子どもたち」より下の世代。
そんな自分が戦争反対の考えが強くなったのは、父のおかげです。
8月のお盆の時期になると、いつも父のことを思い出します。
「死んだ男の残したものは」の替え歌です。
♫ 死んだオヤジの 残したものは
戦争体験と 戦争反対の気持ち
…
父が生きていたら、今年98歳。
今の二ホンを見て、どう思うことでしょう。
今だったら、父と酒を飲みながら、おだやかに話せたと思います。
それができないのが、残念。
でも、こんな気持ちになっている自分を、
父はあの世から笑顔で見てくれているかな。
* 「死んだ男の残したものは」
何度聞いても、心にしみる曲ですね。