ガソリンスタンドに 若いジョセーが … (95)
Kセンセーが、大変なコーコーに勤務している頃のことを語ります。
車で、通勤していた。
帰り路、ガソリンスタンドの前で、若いジョセーが旗を振っている。
「カノジョは、もしかして … 」
ガソリンが少なくなっていたので、中へ車を入れて止めた。
窓を開けると、
「センセー!!」
「お ~ !! ここで働いているの ?」
その時以来、そのスタンドを利用してあげることにした。
しばらくして、カノジョがコーコーにやってきた。
クラス担任は転勤してしまっていたので、
在学当時、ガクネンシュニンだった自分が相談にのってあげる。
幼稚園・保育園のセンセーを目指すというのだ。
専門学校を受験するとのこと。
一段落すると、カノジョが「センセーは厳しかった」と言った。
「そんなことないよ」
「だって、私にシャカイカで赤点つけたよ。単位をとらないままの卒業だよ」
「全然、ベンキョーしなかったじゃない」
勤めていたコーコーでは、一定の枠内ならば、単位を落としても、
進級・卒業できる仕組みに変更したのである。
何度カノジョを呼び出して話しても、
テストで及第点をとってくれなかった。
赤点をつけざるをえなかった。
カノジョは、入学した時から、キョーシに反抗的だった。
中学までに、よほど嫌な思いをしてきたのだろう。
キョーシ・ガッコーへの不信感が強烈だった。
顔立ちは美しく、頭も悪くないのに、とにかく反抗的で勉強しない。
普通にベンキョーすれば、よい成績をとることができるセートだった。
話を元にもどす。
カノジョは専門学校を受験したが、不合格だった。
その後、病院事務として働いていたそうだ。
よかったと思っていると、
「センセー、○○ちゃん、亡くなったよ」とあとで卒業生から聞いた。
自死だったという。
交際相手とのもつれかららしい。
病院に勤めていると聞いて、ホッとしていたのに。
在学中、手を焼いた。
ガソリンスタンドと、専門学校の受験で相談に来た時だけが、
カノジョとの穏やかな時間だった。
その時の笑顔が忘れられない。
生きていたら、50歳になろうという年齢だ。
カノジョに対しても、何もやってあげられなかった。