彼を救ったのは 何だったのか ? 話(36)
Kセンセーは、
間違ってひっぱたいてしまったA子と、その父親について語りつづけます。
まっ赤に染めた髪、異常に長いスカートのA子。
「もう少し頑張れば卒業できる」という時期になっていた。
ところが、ガッコーを休み始めたのである。
何とかして卒業させたい。
ガッコー帰りに、自転車で家庭訪問をした。
ところがA子はいない。
両親だけである。
「お上がり下さい」と言われ、父親と話しをした。
すると父親は、自分の中学時代に住んでいた地域の、
すぐ隣の出身者であることがわかった。
郷土の酒が出た。
お互い方言で話し、盛り上がった。
結局、父親と意気投合してしまったのである。
酒を飲んでいる間、実はA子は2階にいた。
カノジョがそっと降りてきて覗くと、
「まだKセンセーがいる。
なぜ父と、あんなに話し込んでいるんだ」と思ったそうだ。
父親が、かつて有名な人物の秘書だったこともわかった。
いろいろ話が合う。
A子を何としても卒業させたいという気持ちを、両親と共有できた。
ジュギョー中、勘違いでひっぱたかれたにもかかわらず、
A子は父親から「Kセンセーはいいセンセーだ」と言われ続けた。
幸いにも、A子は父親のことを尊敬していた。
結局、父親の存在が娘を卒業させる力になった。
ほんとうに父親に感謝である。
家庭訪問をしてセートの親と酒を飲んだのは、
最初で最後のことであった。
数年前、遠方に住んでいた父親と「今度こそ、また飲みましょう」と電話で話した。
お元気な声だった。
しかし、その後しばらくして亡くなられた。
彼の人生や、今のこのクニのことなど、
もっと多くのことを飲みながら話したかった。
キョーシ人生のなかで、こんなに親しくなった父親はいない。
飲んだのは、40年ぐらい前のことである。
A子さんからは、毎年冬、名産の果物がとどく。
こちらもお返しを送る。
そのたびに電話で話をしている。
「センセー、うちらの地域では80代はワカゾーだよ。
センセーは、まだまだ若い」といつも言われる。
Kセンセーは、A子さんの父親に救われました。
彼はその後、何度か失敗したのち、ボーリョクを一切ふるわなくなります。
では、どういう指導に変わったのでしょう ?