長い時間 一人で待ちつづける 221102
救急車が救命救急センターに着くと、
アイカタは集中治療室(ICU)へ。
コロナ感染防止のため、私は病院内に入れません。
センターの搬送口の、守衛室の向かい側の小さな個室。
患者の家族が2人しか入れないほどの狭いスペースです。
透明ビニールの向こうから、医師・看護師さんが説明をしてくれました。
最初に看護士さんから簡単な説明を受けたあと、一人で待ち続けます。
守衛さんに「ふつう、どれぐらい時間がかかるんでしょう?」と聞くと、
「長い人で、1時間ぐらいですかね」との返事。
ポツンと一人で待機し続けます。
1時間たち、2時間たち、3時間たち … 。
我慢していても、自然に涙がにじんできます。
ティシュを買いに、近くのコンビニへ。
夕食をとっていません。
自分がダウンしてはならないと、
病院の自販機でビタミンドリンクを購入して飲みます。
気がつくと、ひとりでに身体がガタガタと震えていました。
その間に、いろんなことが頭の中をよぎります。
「このままアイカタが亡くなったらどうしよう」
ギボやギフが亡くなったときは、
アイカタと葬儀屋さんの3人で火葬をすませました。
今度は、自分一人で … 。
私たちは「天涯孤独」ではなく、「天涯二独」。
アイカタの一族は、ほぼ絶えています。
私の身内は、遠くにいます。
連絡するところはありません。
しかし、喪中はがきはどうしよう … などと考えてしまいました。
ギオバのときが、これまでに私が看取った最後のケースです。
役所や諸機関、取引業者などへの連絡・手続きが次々とありました。
医師・看護師の説明を待っている間、
自分を責める言葉が絶え間なく浮かんできます。
「何でもっと早く病院へ連れて来なかったんだ」
「アイカタを説得できなかった自分は、何と弱い人間だったのか」
「なぜ、アイカタの心身の異常・変化に気づかなかったのか」
「普通救命救急の講習を受けたばかりじゃないか」
無理をして、明るいことも考えようと努力します。
「この機会に、アイカタが嫌がっていた手術をやってもらおう」
「二人いっしょに健康な身体づくりに励もう」
「退院後、いろんなところへ旅行しよう」
「二人とも生まれ変わって、残りの人生を充実したものにしよう」
「アイカタを絶対に幸せにするぞ」
しかし、希望ある前向きな思いは長続きしません。
午後10時を過ぎた頃に、ようやく医師の説明を受けました。
「ヘモグロビンが異常に減少しています。
強度の貧血です。
現在、輸血しています。
原因をつきとめるために、内視鏡検査を行いました。
貧血だけでなく、○○、○○、○○などの問題をかかえています。
意識は戻ってきました」
「意識が戻ってきたということは、もう大丈夫だということですか」
「いえ、そうとは言えません。
容態が急変するかもしれないからです」
看護士さんから入院・面会などの説明があり、
いくつもの書類にサインをしました。
次回は、「深夜帰宅して 愕然とした」という話の予定です。