お前は身体が弱いから 〇〇に行く前に …
8月になると、いつも亡くなった父のことを思い出します。
父は酒に酔ってから、グンタイ生活のことをいろいろ話してくれました。
敗戦の前年の暮、「△△学校」(現在は大学)を中途卒業し入隊。
実質8カ月。
戦地には行かず、国内で終戦。
「お前は身体が弱いから、グンタイに入ったら、戦地に行く前に死ぬだろう」と、
私によく言っていました。
父が所属していた部隊に、
頭は良いけれども、身体の弱い同期の兵隊がいたそうです。
彼はしごかれ、下痢が止まらず、戦地ではなく内地で亡くなった、と。
父も上官によくなぐられたという話でした。
「大卒」の幹部候補生ですから、なおさらひどかったようです。
戦後、映画館で、たまたまその上等兵に会ったそうです。
「上等兵殿!!」とあいさつすると、
彼はブルブル震えだし、土下座して謝ろうとしました。
センソーが終わってから、かつての部下たちに散々やられたのでしょう。
父は、「△△さん、家族の前です」と、立つことを促したと言います。
父の話を聞いたために、テレビに出て来る人を見ながら、いつも、
「この人は、グンタイに入ったら殴られるタイプだな」と思ってしまいます。
笑い顔、泣き顔、ふてくされ顔など、さまざまです。
真面目に話しているのに、笑っているように見える顔の場合、
「貴様、何だ、その顔は!!」「何がオカシイ!!」と、張り倒されるだろうと。
私も、殴られるタイプです。
臆病、気弱、だけど内心は反抗的、体力も運動神経もまるでダメ。
やられる要素、満載です。
「グンタイもセンソーも絶対にイヤだ」と「皮膚感覚」で思っています。
父の「グンタイ話」のおかげでしょう。
8月は「父を思い出す月」です。
父の年齢の方々は、ほとんど亡くなられています。
父母・祖父母たちの体験を聞いて育った
「戦争を知らない子どもたち」も、そのうち … 。
センソーの記憶が、どんどんこの社会から消えていきます。
何とかしなければならないのですが … 。