「一緒の写真を とらせてください」 話(6)
今年最後のジョシコーばなし。
まぎらわしいので、このブログで紹介している彼のことをKセンセーと記します。
あるとき、職員室に3人のジョシセートが入ってきます。
人気のあるAセンセーのところに行き、
「Aセンセー、一緒に写真をとらせてください」と。
ケータイやスマホのない時代の話です。
Kセンセーは、自分には無縁なことなので、仕事をつづけていました。
すると「Kセンセーも」と声をかけられたのです。
慣れないことなので、
ためらいながら一緒に中庭の池のところに降りて行きます。
2人の生徒たちは「Aセンセー!!」とキャーキャー言いながら、
一緒に写真を撮り続けました。
その間、Kセンセーには声がかからず、
ただひとりポツンと立っている状態が続きます。
耐えられなくなり、職員室に戻ってしまいました。
あわてた生徒たちが呼びにきましたが、彼は断ります。
じつは、3人の中の大人しい子が、
Kセンセーと一緒に写真を撮りたかったのが、そもそもの目的だったようです。
他の2人の子たちは、
自分たちの好きなAセンセーに夢中になってしまいました。
大人しい子は「Kセンセーが帰っちゃった」と、泣きべそをかいてしまったそうです。
Kセンセーは後になって、その子に悪いことをしたなと後悔していました。
今になってみると、顔も名前も覚えていない。
しかし、大人しく気立てのよい子だったようです。
写真をとってもらえなかったその子にとっても、
ジョシセートの扱いに慣れていないKセンセーにとっても、
何ともやるせない思い出になってしまいました。
彼女の方は、もう忘れている話なのでしょうが。