古畑任三郎に 秋山小兵衛 ? 話(58)
Kセンセーが、語り続けます。
自分のクラスのセートは、静かに本を読んでいる。
自分が「朝の読書」を提案したのだから、気迫が違う。
こわいセンセー、強いセンセーのクラスも整然としている。
野球部の顧問をしていた、若いスーガクのキョーシ。
読書の時間のチャイムが鳴る前に教室に行き、
「お早う」と言うと、いきなり教卓で本を読みだす。
そのあと教室に入って来たセートたちは、
静かに着席し、次々に本を読み始める。
次々に登校してくるセートたち。
もうすでに始まっているのかと勘違いするぐらいだ。
遅刻も全くない。
スーガクのキョーシ曰く、
「うるさいんだよな、他のクラスが。
何でこれぐらいのこと、指導できないかなぁ。
Kセンセー、オレ、もう50冊も読みましたよ。
読書の時間、いいですねぇ」と。
自分は、崩壊しているクラスをどうするか、試行錯誤を始めた。
物騒な表現だが、エンゴシャゲキである。
自分が担当しているクラスは、
ジュギョーの最初の5分間だけ「読書」にした。
「何でシャカイカの時間に、読書?」というセートに、
「ゲンダイシャカイのジュギョーを理解するには、
まず読む力がなければだめなんだ」と説明。
強引で、ムチャクチャである。
今だと、
キョーイクイインカイに「シャカイカから逸脱している」と指導されるかもしれない。
見ていると、本を選べないセートがいることがわかった。
どんな本を読んだらよいか、わからないのである。
そこで、40冊ファイルを用意し、
B5版で裏表のプリントを綴じて、毎時間、セートに提供した。
本の抜粋である。
1学年7クラス。
授業のたびに新しいプリントを綴じて、ファイルを使い回す。
セートが読みやすく、おもしろい本を選ぶ。
読んだら、次を読みたくなる「さわり」の部分だけを印刷する。
自分自身、本を読んでこなかったから大変だった。
ツマが大量の本を読んでいたので、いろいろアドバイスをもらった。
古畑任三郎、秋山小兵衛、
ビートたけし、さくら桃子 …
映画、テレビ番組が本になったもの、
名作のダイジェスト本、
マンガのノベライズ、
スポーツ関係、
レキシの授業に出てくる古典の現代語訳、
星新一のショート・ショート … 。
これらの本の中に、以前紹介した『さらば、悲しみの性』も含まれている。
セート曰く、「先生のプリントは面白い。
だけど、いつも、終わりが途切れている」と。
「あれは、抜粋だよ。
そのあとは、君たち自身が図書館から本を借りてきて読むんだよ」と答えた。
朝の読書が崩壊しているクラスのセートも、
自分のジュギョーでは、実に見事に読んでいる。
「そうだ、朝の読書もジュギョーにすればいいんだ」と思った。
教務のセンセーに相談する。
「読書の時間を、何という科目にするのか。
仮にコクゴの設定科目にするとすれば、
コクゴの免許を持っているキョーシでなければ、指導できない。
だから、読書の時間をジュギョーにすることはできない」と言われた。
さあ、このあとどうなったでしょう ?