「気球って 好きですか ?」 (上) (104)
KSストーリー、104話。
Kセンセーが語ります。
退職前の、最後のコーコーでのこと。
10歳ほど自分より若いキョーシが、言った。
「Kセンセー、気球って好きですか ?」
「好きですよ」
「文化祭で、作りませんか ?」
「作ったことありませんね」
「設計から、すべて手伝いますよ」
「教えてもらえるんだったら、いいですよ」
彼が、自分のクラスの副担任になってくれるという条件で、引き受けた。
入学したばかりの、セートたちに持ちかけた。
そして、クラスで取り組むことになる。
円周30メートル、
高さ15メートルほどの巨大気球である。
揚げると、4階建ての校舎の高さより高くなる。
正確な記憶ではないが、
底辺の幅1メートル、長さ9メートルの布(長い三角形と台形のもの)を、
36×2本用意した。
それを、一般キョーシツよりも広いシャカイカキョーシツで、
縫い合わせていく。
家庭科のセンセーから借りたミシンを使う。
夏休みじゅう、セートが毎日ぬいつづけた。
副担任は、最初の設計と、布の買出しなどを手伝ってくれた。
しかし、彼は運動部の指導で、毎日忙しい。
縫製の作業は、すべてセート。
クラス担任は、セートの作業する日、
必ずガッコーに来ていなければならない。
「夏休み、毎日、ガッコーに出勤するんだよね?」
「当然ですよ」と、ケロッとした顔の副担任。
騙されたと思ったが、もう遅い。
部活のセートは、練習のためにほとんど参加できなかった。
結局、部活に入っていないセートが中心になって、
エアコンのないシャカイカキョーシツで縫い続けたのである。
室温は、40℃をはるかに越えていたと思う。
練習がないとき部活のセートも、たまに手伝ってくれた。
不器用な自分は、応援だけである。
猛暑の中の作業なので、ほぼ毎日、アイスの差し入れ。
もちろん、ポケットマネー。
作業を、途中で断念するわけにいかない。
そして、どうなったか。
続きは、明日。